1. 戦略は、実践から離れた概念ではない
戦略という言葉は、現場から少し離れた場所に置かれがちです。経営層が決める大きな方針、PowerPointの上段にある抽象的な一文、年に一度だけ見直される計画。そのように扱われると、戦略は実践から遠ざかります。
しかし、実務で効く戦略は、現場の外側にはありません。どの顧客を選ぶか。どの活動を重ねるか。何をやらないか。どこに人と時間を置くか。そうした実践の配置が積み重なったとき、戦略は初めて形になります。
戦略は、立派な方針として存在するのではなく、選ばれた活動の組み合わせとして見えてくる。
— Biotope note
2. 診断がなければ、方針は空中に浮く
Richard P. Rumeltは、良い戦略には核があると見ます。状況を診断し、取り組むべき課題を見極める。そのうえで基本方針を置き、方針を実行する一貫した行動へ落とす。この順番が崩れると、戦略はすぐに願望やスローガンになります。
この見方は、戦略と戦術の区別を実務に戻してくれます。戦術は、戦略より小さいものではありません。軽いものでも、低いものでもありません。診断と方針に支えられた具体策が、戦術です。
固定するもの — 診断と基本方針
戦略は、簡単には動かさないものを決めます。何が本当の課題なのか。どの顧客を選ぶのか。どの領域では競争しないのか。どの強みに資源を寄せるのか。ここが曖昧なままだと、戦術は毎回その場の反応になります。
動かすもの — 一貫した行動
戦術は、動かしてよいものを扱います。表現、順番、媒体、価格提示、打ち手の強弱、短期の改善。ただし、ばらばらに動かすのではありません。基本方針に沿って互いに支え合うとき、それらの行動は戦略の一部になります。
3. 活動の配置が、戦略になる
Porterの活動システムは、戦略を「活動の組み合わせ」として見る視点を与えてくれます。個々の活動は小さくても、それらが互いに支え合うと、簡単には真似できない全体になります。
この見方を取ると、戦略と戦術の境界は固定ではありません。同じ活動でも、孤立して見れば戦術です。全体の配置の中で見れば、戦略の一部になります。
だから、実務で見るべきなのは「これは戦略か、戦術か」というラベルではありません。その活動が、どの配置の中で意味を持っているのかです。
4. 実務での使い分け
会議で戦略と戦術が混ざるのは、悪いことではありません。むしろ自然なことです。現場の話をしなければ、戦略は空中に浮きます。方針の話をしなければ、戦術は散らばります。
大事なのは、いま診断をしているのか、基本方針を決めているのか、行動を設計しているのかをそろえることです。そこがそろえば、議論は前に進みます。そろわなければ、言葉は立派でも、決めるべきことは決まりません。
戦略は、実践の上にあります。けれど、実践から離れては存在できません。